2012年2月4日 NHK・BS「地球テレビ100」 午後10時

イランの核開発疑惑と経済制裁

岩本Q.イランのホルムズ湾封鎖問題についてドイツではどのように報じられていますか?

▼熊谷 徹

イランに対する経済制裁、特に原油の輸入禁止の問題は、大きく報じられています。

内容としましては、イランの核兵器開発について懸念を表明する記事が目につきます。また、EUの制裁措置に反発して、イランとつながりを持つ過激組織が、ヨーロッパでテロ攻撃を起こす危険も指摘されています。

ミュンヘンでは昨日から、40カ国以上の防衛大臣、外務大臣が集まって毎年恒例の「安全保障会議」が開かれていますが、この中でもイラン問題が重要なテーマになっています。

 

かつて、イランがドイツにとって重要な貿易の相手国だった時期もありました。

しかし今では、経済制裁のために、ドイツとイランの貿易量は昔に比べて少なくなっています。

今日のドイツでは、イランに対して同情的な論調は、ほとんど見られません。

サヘルQ.イランからの原油の輸入禁止、財政問題を抱えるEUとしては苦しい選択だったと思うのですが、なぜ制裁に踏み切ったのか?

▼熊谷 徹

EUでイランの原油を多く輸入している国々、たとえばイタリア、ギリシャ、スペインにとっては、今回の輸入禁止措置は苦しい状況をもたらしました。

 

それにもかかわらずEUが制裁に踏み切ったのは、イランの核兵器開発問題が、安全保障の観点から、無視できなくなってきたからです。

私はドイツからイスラエルに取材に行ったことがありますが、

飛行機でわずか3時間半の距離です。

 

ヨーロッパ諸国と中東地域のつながりは、われわれ日本人が想像する以上に強いのです。

 

ヨーロッパの政治家の間には、「経済的、政治的に結びつきが強い中東の混乱を、無視してはならない」という大原則があるのです。

 

EU諸国は、イランが核兵器を保有した場合、中東情勢の混乱がさらに深まると見ています。

このためEU諸国は、アメリカと歩調を合わせて、イスラエルを保護する立場を取っています。

 

特にドイツは、ナチスがかつてユダヤ人を迫害したことに対する反省から、イスラエルの安全を非常に重く見ているのです。

 

したがって、将来イランが「イスラエルを殲滅する」と脅した場合には、ドイツを初めとするEU諸国は、イランに対して強硬な姿勢を取るものと見られています。